音楽活動とは

下の文章でも少し触れているが、私個人はアイドルの本業は「歌って踊ること」だと思っている。つまり、もう少し大きく言うと「歌手としての活動」、音楽活動こそが、活動の根幹だと考えているということである。

周知のとおり、KinKi Kidsは作詞作曲をするアイドルグループである。昔のことはよく知らないけれど、最近このテの活動をするアイドルは増えているのではないかと思う。たとえば、アルバムに自作曲が収録されたり、コンサートのソロコーナーで自作の曲を披露したりといったことは、どのグループにもあることなのだろう。ソロデビューしていないタレントさんのソロコンサートの話も、聞かれるようになった。
このほど、光一さんのソロデビューが決まった。この夏には本人作曲のシングルCDをリリースする。これはちょっとまた、面白いことになってきたと思う。なんでかって言うと、私個人は「光一さんの音楽は自己表現ではない」、と思うからだ。これは感覚なので反論されてもなんともいえないのだが、彼には剛さんのようなソロ活動に対する逼迫した欲求はないように見える。吐き出さないよう壊れてしまうような、切羽詰った気持ちを感じない。ただ静かに、自分がやるべきときを待っていたように見える。もちろん、本当のところはわからない。光一くんにもソロデビューを熱望する気持ちがあったのかもしれない。人一倍こだわりの強い面も持っている彼だから、自分の好きなように音楽を作り込みたい気持ちがあったのかもしれない。はたまた、ファンの重すぎる期待にこたえなくてはいけない、というアイドルらしい使命感からかもしれない。

「彼の音楽は自己表現ではない」というのは、いささか乱暴な言い方か。彼が歌い踊り、パフォーマンスをする限り、それは「自己表現」であるといえる。ただ、彼が自分で作詞をしないということもあるけれど、それ以上に、彼自身には「音楽で自己表現」という発想そのものがなさそうだと私は思う。記憶が不確かなのだけれど、昔、「自分の気持ちを知られたくないから、作詞は苦手」というようなことを言っていたときが(確か)あって、私は「なんとまぁ、この人らしい発言なのか」と感心してしまったんだけど、このあたりの発言を根拠に、私はそんな風に思うのかもしれない。無論、音楽は歌詞だけを楽しむものではないし、旋律があって初めて成り立つものなんだけど、まぁとりあえずそのあたりのことは置いておいて。

剛さんの活動を比べてみるととても分かりやすいんだけど、剛さんの音楽活動は私は迷うことなく「自己表現」だと解釈している。KinKiでいるときより、それを比較的自由に行える場が、ソロであると思う。だから自分で作詞作曲をするし、編曲にだって携わっている。コンサートではびっくりするくらい個人的な話をファンに打ち明けている。限りなく「自己」に寄った活動をしている。だからファンは当たり前のように「これはKinKiの剛さんとはべつもの」なのだという前提のもとで、観ることができる。

ただ、光一くんはどうなんだろう? 彼はどんな風に今後活動を展開していくんだろうか。冒頭の話に戻るが、彼のソロ活動はアイドルとしての活動の基軸とブレの少ないものだと思う。私は今後、どんな風に光一くんの音楽を受け止めていけばいいのかしら。「たくさん曲を書き下ろして、アルバムを出して欲しい」「またソロコンサートをやってほしい」そんな風に望むのは、「アリ」なことなのだろうか? 今の段階ではよくわからないのだけど、そういう戸惑いも含め、私はとても新鮮に受け止めているし、何より光一くんの動向が興味深くてしょうがない。これから彼がひとりで何をしていくのか。何を築き上げていくのか。とても楽しみなのである。


それはそれとして、今回のソロデビュー曲は『獣王星』の主題歌、っちゅーことで、一部の一般の人にも耳に入っているのだと思うのだけど、あまり、好評の声が聞こえて来ないように思う。私が見落としているだけなのかもしれないが、肯定的意見はたいていファンの方が書かれたものだった。『リモート』のときの「solitude」という楽曲のときも思ったが、どうしてか、光一くん作のシングル曲は、こう、いまひとつ一般的な訴求力にかけるものを意図的に選んでいるようにしか思えない。私は光一くんはすごいその曲を作る才能があると思うので、何だかもったいないなと思ってしまう。まぁ、私の感覚なんてどうせあてにならないので、音楽番組の感想とかで、もっと雑多な人々の意見が聞かれれば、評価は全然違うのかもしれないけれど。